M-aid web版 Vol.50
貸付事業用宅地の50%評価減について
平成27年の相続税の大改正から約1年経過しました。ニュースを見ると都心に家を持っているなら相続税の申告が必要になる人が大幅に増える!といった話題がよくでてきて、皆さんの関心も高くなっているかと思います。中には相続税が心配で・・・という人もいるのではないでしょうか。今回はその中でも土地の話をしたいと思います。
小規模宅地等についての相続税課税価額の計算の特例(以下本特例)は平成27年1月1日以降の相続から「居住用」の限度面積が上限240㎡から330㎡にアップし、さらに「居住用(上限330㎡)」と不動産貸付業を除く「事業用(上限400㎡)」が完全併用できるようになりました。
【小規模宅地等の特例の上限面積】
種類 | 対象面積の上限 | 減額割合 | |
平成22年4月1日以後 | 平成27年1月1日以後 | ||
特定居住用宅地等 | 240㎡ | 330㎡ | 80% |
特定事業用宅地等 | 400㎡ | 400㎡ |
|
特定同族会社事業用宅地等 | |||
貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 200㎡ | 50% |
一見これらの改正の影響は「居住用」と「事業用」の土地にしか及ばないように見えますが、実は不動産貸付事業用の土地をもつ方にもメリットがあります。
「居住用」と「貸付事業用」の土地は限度面積の完全併用はできませんが、それぞれが限度面積に達しなければ余裕部分の併用ができるため、居住用の限度額が増えた恩恵を貸付け事業用で受けられるケースがあります。
例えば、自宅敷地(240㎡)の横にアスファルト敷きの駐車場(100㎡)を保有し、賃貸していたとします。従来であれば自宅敷地だけで旧上限の240㎡に達してしまい、駐車場に本特例は使えませんでした。しかし、改正後は居住用の新上限330㎡に達していないため、余裕部分について駐車場に貸付事業用の特例が受けられます。
*余裕部分(貸付事業用適用面積)の求め方
貸付事業用上限面積200㎡-(自宅敷地240㎡×200/330)=貸付事業用適用面積54.55㎡
つまり駐車場のうち54.55㎡について50%の評価減が受けられることになります。
本特例の「不動産貸付業」とは、「不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けなどで相当の対価を得て継続的に行うもの)」でありマンションや戸建ての貸付けだけでなく、土地や駐車場の貸付けでも、要件を満たせば適用が受けられます。ただし「宅地」とは建物や構築物の敷地の用に供されている土地のことですので、いわゆる青空駐車場ではこの特例の適用はうけられません。フェンスや看板だけではなくアスファルト敷きにしておくなどの準備が必要です。
またこの特例の貸付事業用か否かの判定は事業の規模を問いません。所得税法上の「事業的規模」の判定基準である所謂5棟10室基準で判断するのではなく、1室でも駐車場1台でも貸付事業用になります。
また相続時にたまたま一時的空室であったとしても、入居可能な状態で新規入居者の募集をしている場合は、空室に対応する敷地も含めて敷地全体を「貸付事業用」と扱ってよいことになっています。
基礎控除の引き下げにより、特に土地所有者の相続税負担は確実に増加すると考えられますので、本特例をうまく活用できないか十分に検討したいものです。
(このコンテンツは、平成27年11月13日現在の法令・通達等により作成しています。)