M-aid web版 Vol.3
貸倒れについて
景気の低迷が長期化している現在・・・
得意先の業績悪化により代金の回収に苦労している会社も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は債権放棄による貸倒損失の税務上の取扱いを事例に基づいて確認していこうと思います。
-事例-
建材業を営むA社は得意先のB工務店がマンションを建築した際に台所等の水回り品を納入した。
A社はB工務店に対して再三、支払の催促をしているが、1年前に約半分の入金があっただけで、その後はまったく支払がない。
取引先銀行の情報によると、B工務店は会社の状況が厳しいばかりか、最近では消費者金融関係の取立てが多く出入りしているとのことで、A社はあまりかかわりたくないと思っているので残金については債権放棄による貸倒れとして処理したいと考えている。
上記のような事例の場合、
原則的取扱いとして法人税基本通達9-6-1によると、
「法人の有する金銭債権について一定の事実が発生した場合には、
その事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する」と規定しており、
その事由として法律的に債権が消滅するケースとともに、
「債権者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債権者に対し書面により明らかにされた債務免除額」という文言が含まれています。
上記の「債務超過の状態」とはどういうことなのかというと・・・
相手先の法人に土地や有価証券などの含み資産がある場合に、それらを時価評価し、なお負債が資産を上回っている状態のことを言います。
つまり、現実的には相手先の法人の貸借対照表や土地や有価証券の明細などの資料入手が必要となります。
相手先が関係会社などのように資料が入手可能なケースは問題ないのですが、第三者間のケースでは困難なケースももあるため表面上は債務超過にみえても時価評価すると債務超過にならない場合には、実質的な贈与として寄付金となることに留意する必要があります。
また債務超過の状態が相当期間継続することが要件となっていますが、
「相当期間継続する」とはどのくらいの期間のことかというと・・・
法人税基本通達9-6-2によると、
「その債務者の資産状況、支払能力等からみて、その全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができる」とあります。
よって何年間と定められているわけではなく、個々に現実的な対応をする必要があると思われます。
なお、その場合には、債権等の発生、返済状況、その後の督促状況などを明確にする必要があることにも留意する必要があります。
上記要項に該当している場合、
どのようにして「債権放棄」をすればいいのかというと・・・
書面によって債権放棄を実行する場合にはいくつかの方法がありますが、
いちばん実行しやすく、かつ有効な方法は債権放棄通知書を内容証明郵便によって送付する方法が一般的です。
なお、実行する場合には内容証明郵便の手続きを決算期末日までに行わなければなりません。
※上記のようなことに注意し貸倒処理をしなければ場合により寄付金と認定されるかもしれませんので、
ご注意ください。
以上、債権放棄による貸倒損失の税務上の取り扱いについて書かせていただきました。
個々のケースにより異なることもありますので、詳しくはお問い合わせください。
(このコンテンツは、平成22年4月14日現在の法令・通達等により作成しています。)