森川(M)会計事務所が皆様の経営をサポート(aid)!
毎度、税務などに役立つ情報を発信するWeb通信です。

M-aid web版 Vol.2      

贈与税の基本

最近よく報道などで「贈与」という言葉を耳にします
この贈与にかかる税金があります。


贈与税です。


実は、この贈与税というのは前回紹介した相続税と深い関係があります。


相続税とは、
亡くなられた方(被相続人)の財産のすべてがいくらになるかを金額に換算し、その金額を受け取る(相続を受ける)人に対してかけられる税金」です。

財産をたくさんもらえばもらうほど、税金が多くなってしまいます。



では、財産をたくさん持っている方は
「相続税がかからないように、亡くなられる前に財産を移したほうがいいんじゃないか?」
と考えるのではないでしょうか。
全ての財産を、生きているうちに移してしまえば、相続税はかかりません。



こういった事態を防止するため「生きているうちに財産を移転する」と言う行為に対して
税金がかけられます。それが贈与税です。
贈与税は相続税の課税されない部分を補完するために設けられたため、相続税の補完税であるといわれています



では、「贈与」とはいったいどのようなことをいうのでしょうか?




「贈与」とは・・・民法の規定では、贈与者(あげる側)の「あげる」という意思表示と、受贈者(もらう側)の「もらいます」という意思表示の合意で成立する契約のことをいいます。
書面で交わしても、口頭だけでも成立します。




そして、この契約によって個人から財産が移転したときに、
もらう側に課税される税金贈与税です。
(ちなみに、法人から財産をもらったときは贈与税ではなく所得税がかかります





贈与税の課税方式は大きく2つに分けられ、「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。

以下、2つの課税方式について触れたいと思います。
なお、贈与税の配偶者控除の特例や住宅取得等の資金の特例など、いろいろな特例がありますがここでは省きます。



①暦年課税 


1月1日から12月31日までの一年間のうちに、もらった財産の合計額に対して、受贈者(もらった側)に課税されます。
もらった財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いて課税価格を算出します。そしてその課税価格に応じた税率をかけて、課税価格に応じた控除額を引いた額が納める贈与税の額となります。
税額の計算は以下の表を参考にしてみてください。


〈では、計算例を見てみましょう〉
なお贈与財産の種類に制限はありませんが、以下で紹介する例では説明を簡略化するため金銭のみでの贈与を行った場合を前提に書いています。

例)1月1日から12月31日の一年間に、父からは400万円をもらい、母からは100万円をもらった場合



贈与財産は 400万円+100万円=500万円
500万円-110万円(基礎控除額)=390万円
390万円×20%25万円53万円・・・贈与税の額


※基礎控除額の110万円は、受贈者一人に対して一年間につき、110万円の控除ですから、複数の人から財産をもらった場合でも、贈与を受けた財産の合計額から控除できる基礎控除額は、贈与者(あげる側)の人数に関わらず110万円です。





②相続時精算課税 


贈与が行われた年の1月1日現在において、65歳以上の親から推定相続人である20歳以上の子(代襲相続人を含む)に対する贈与については、受贈者の選択所轄税務署への申告により、適用できます。いったん選択し届出を行った以降は、この相続時精算課税にかかる親から子への贈与については、暦年課税に変更することはできません


この課税制度の適用については、贈与者(親)ごとに受贈者(子)が選択することができます。この課税制度を選択した場合は、贈与税の計算は暦年課税の贈与とは別枠で行われます。
(以下の計算例を参照ください)

相続時精算課税に係る贈与者(親)が亡くなるまでの間は、その選択した親から子への贈与であれば、何回でもこの制度の適用ができますが、選択後のその親から子への贈与財産の累積額が2500万円を超えると、超えた部分については一律20%の贈与税が課税されます



そしてこの課税制度によって納めた贈与税の金額は、その贈与者(親)の相続が発生し、相続税が計算される際に、この制度にかかる生前贈与の財産については、亡くなった方の相続財産としていったん相続税の計算の中に取り込まれます。
そして相続税額を計算したのちに、この相続時精算課税制度によって既に納めた贈与税の額を精算します。


すなわち、この相続時精算課税制度を選択した受贈者(子)の、相続した財産(相続時精算課税を選択後、この課税制度にかかる親から贈与済の財産+この相続で新たに取得した財産)について発生した相続税が、相続時精算課税制度にかかる贈与税の納付額よりも、

  • 多い ⇒その納付した贈与税を相殺したあとの残りの相続税を納付する
  • 少ない⇒相続税を相殺したあとの残りの贈与税額が還付される

ということになります。


〈では一度、計算例を見てみましょう〉

贈与一回目  Aさんはある年の1月1日から12月31日の一年間に、父からは400万円をもらい、母からは100万円をもらい、祖母からは50万円をもらった。父からの贈与について相続時精算課税制度を選択した。



この課税制度の選択した贈与税を計算する際には、この相続時精算課税制度に係る親からの贈与財産(父)とそれ以外の相続時精算課税の適用のない贈与者(母、祖母)からの贈与財産とは区別して計算します。

  • <①相続時精算課税を選択した親から子への贈与についての贈与税の計算>



        400万円-400万円(特別控除額)=0円・・・課税価格なし
              ※特別控除額の残額は
               2,500万円-400万円=2,100万円・・・翌年以降に繰越

  • <②暦年課税の贈与税の計算>

        100万円+50万円=150万円
        150万円-110万円(基礎控除額)=40万円
        40万円×10%=4万円
             よってこの年度の贈与税額は4万円になります。

  • 注※基礎控除額の110万円は、受贈者一人(Aさん)に対して一年間につき、110万円の控除ですから、複数の人から財産をもらった場合でも、贈与を受けた財産の合計額から控除できる基礎控除額は、贈与者(あげる側)の人数に関わらず110万円です。

贈与二回目  Aさんは一回目から5年後、父から1,200万円もらった。


  • <①相続時精算課税を選択した親から子への贈与についての贈与税の計算>

      1, 200万円-1,200万円(特別控除額)=0円・・・課税価格なし
※特別控除額の残額は
    2,100万円-1,200万円=900万円・・・翌年以降に繰越

  • <②暦年課税の贈与税の計算>



 なし
               よってこの年度の贈与税額は0円になります。


※ 相続時精算課税にかかる財産の贈与がある年度については、贈与税額が0円であっても申告は必要です。期限内に申告されない場合は、相続時精算課税の特別控除が適用されませんのでこの例で計算しますと、1,200万円×20%=240万円の贈与税の納付となり、さらに加算税などの税金が余計にかかる場合があります。

贈与三回目 Aさんは二回目の贈与から10年後、父から1,600万円をもらった。

  • <①相続時精算課税を選択した親から子への贈与についての贈与税の計算>

1,600円-900万円(特別控除額)=700万円
700万円×20%(一律)=140万円
※特別控除額の残高は
900万円-900万円=0円

  • <②暦年課税の贈与税の計算>

           なし
             よってこの年度の贈与税は140万円になります。

相続発生時 三年後、Aさんの父が亡くなった(相続税の計算はここでは省略します)。



相続時精算課税の選択によって贈与済の財産3,200万円を、いったん相続税の課税される相続財産価額の計算のなかに組み入れて、相続税の総額を計算します。
そしてAさんの相続時精算課税によって生前贈与された財産の額と、この相続によって取得した財産の額の合計額に対するAさんひとりの分の相続税の額が200万円になったとします。
そこから既に相続時精算課税制度によって納めた贈与税の額140万円を差し引いて、残った60万円の相続税を納めることになります。


200万円(算出相続税額)-140万円(贈与税既納分)=60万円

以上、贈与税についてや、その2つの課税方式の計算等について書いてみました。
そのほかに、先にも書いたとおり、

  • ・贈与税の特例措置として贈与税の配偶者控除
  • ・住宅取得等資金の贈与をうけた場合の非課税制度の特例

などがありますので、興味のある方は専門家にご相談ください。
また、大きな金額の贈与を行われる方は、早めに専門家に相談しておくことをおすすめします。


(このコンテンツは、平成22年3月現在の法令・通達等によります。)


NEXT

BACK