Everybody Genius【経営者はみんな天才!】



平岡和矩 様
株式会社 ケー・エス・ケー夢テク研究所 代表取締役
事業内容:経営コンサルティング
http://ksk.cab.co.jp/

株式会社KSK夢テク研究所の平岡和矩先生にお話を伺いました。タナベ経営に在籍されている時に、オートバックスを現在の事業規模に発展させるコンサルをされたことでも有名です。現在も多くの企業のコンサルティングをされながら、月に一度恒例となっている「KSK夢テク研究会」を開催されています。
また、多数の著書も出版されています。これまでの実績や今後のビジネスの在り方についてお聞きしています。



森川:大変活躍されているコンサルタントがいる!!という噂をお聞きし、父(弊社創業者)といきなり事務所へ訪問させていただいてから、15年くらいお付き合いをさせていただいております。 当時は、タナベ経営で活躍をされていて、昭和48年のオイル・ショック 当時オートバックスのコンサルをされ、年商30億くらいだった企業を年商100億企業にされたということが非常に印象に残っております。その頃のお話を聞かせて下さい。


平岡先生:本来コンサルタントは影武者でなくてはいけない んです。守秘義務があり、当時、私がトップのブレーンとして、コンサルをしていたのは社内的にも、ほとんど知られていなかったと思います。 私は、同社のコンサルに入る前にオートバックスの前身である大豊産業 時代に同社のタナベに在籍中に、総合診断のチーフを努めました。 その診断の総合結論で、一言集約すると、当社は、「へそのない集団」 であると直言しました。それを聞いたオーナーの心の琴線にそれが非常に響いたのです。


森川:「へそのない集団」ですか?


平岡先生:とにかくよく働く会社だったんです。 なのに、社歴20年で年商が20億位でした。 この原因についてよく考えてみたところ、一つのベクトルに向かってエネ ルギーを集中させたり、蓄積させると言うことが出来ていないという現象が見えたのです。 これは、事業の目的や狙いがあいまいであることが原因でした。 私は、同社のその現象を「へそのない集団」という表現にしたのです。 そこで、目的や狙いや、とりわけプランの前に、「きらきら輝く旗」となる夢を明確にしていくべきだと提案しました。 要するに、「へそ」とは、中心を意味する例えで、コマも中心軸がしっかりしていなければ、自転作用に支障が起こることを訴えたかったのです。

森川:なるほど。それから先生の社是 願望実現を皮切りに、夢のコンサルが始まったんですね。


平岡先生:オートバックスの経営資本の根本は、夢宣言と部門別の宣言マネ ジメントです。 オートバックスの商売は、物販ではなく、取り付けて初めて商売になります。 だから、ピットが命になります。ピットが稼働しないと言うことは非常に危険な状態であるため、どうやってピットを稼働をさせようかということを考えました。 そこで、「タイヤを売らないとオートバックスではない。」と、社内報で、 アピールしました。 それをきっかけに「タイヤ1番館」という挑戦運動(全店対象)をスタート させました。 当時、タイヤ業界で、タイヤをよく売る店があると言っても月間300本らいでしたが、月間600本~800本3ヶ月連続達成と言うハードルをタイヤ一番館の目標としました。それからは、社長室に挑戦状況が一目でわかるボードを掲げ、日々データ・チェックを重ね、進捗状況におかしいと思うところがあれば、トップが自ら電話をしたり、現場に行ったりという フォローを徹底しました。そうして、目標を達成することが出来たのです。 理屈ではなく、「絶対にやるんだ」という想いが物事を実現する力になったのです。


森川:理屈ではなく、実際に経験させることで一見不可能なことを可能に する方法を指導していたのですね。

平岡先生:夢を持つということは、こちらから仕掛けた分しか伸びられない時代状況にあっては、ますます必要になってくると思います。それには、「自分 がこうしたい」という夢が設定できていないとダメなんです。自分がのめり込むくらいの夢を見つけると言うことは、簡単ではありません。人は心の底で、自ら感じたことでないと自らの仕事をどんどん好きになったり、のめり込む事が出来ません。だから私は、感ずることを重視する感性をベースにする取り組みが非常に大事だと思っています。オートバックスには「へそがない」という対策として、回転軸・中心軸となる経営信念としてSMlの精神と技法を導入しました。SMIは、無から有を生む可能性への挑戦と言う考え方がベースにあり、心に描いた夢は必ず実現するという信念が出発点です。その後、オートバックスは北海道や四国、九州にオファーがあって出店をしたのですが、トップが一人で、多店化していく店舗をマネジメントしていくには、限界があるというリスクが発生しました。 リスクのひとつは地域です。そして時間。距離が離れれば離れるほどマネジメントというものは、難易度は高くなるので、マネジメント能力のある人が新店の店長にならないと失敗の確率は高まります。そのデメリットを補う意図を込めて、導入したものがSMlプログラムで、目的は、FC店のオーナーに、オーナーシップを植えつける仕組みを持つという狙いです。 トップの本部長がわざわざ動かなくても、FC店の店長に、オーナーシップを移植することが可能になりました。 本部がFC店を増やそうとして失敗する理由は、マネジメントが地域分散によって、機能しなくなる点を指摘することができます。多店化に失敗しているケースを検証すると、マネジメントリスクが、意外と計算されて いない場合が多い。


森川:先生はビジネスにとって大切なものをどういう風にお考えですか?


平岡先生:私自身、成功要因を一つに絞れと言われたら、トップ・マネジメントに携わる人について言えば、自分という者をどれだけ見えるようにするかという事にかかっていると思います。ビジネスの場合では、事業を継続させようと思ったら狂いのない判断力が常に必要となってきます。ビジネスは継続させるということに価値があるとするならば、経営判断に狂いがないことが絶対必要な要件となります。そして、人に対して影響力をどのようにして持つかというと、モチベーションやリーダーシップの問題が出てくるわけです大事なことは理念とか信念で、常に、元気・やる気・本気を見られる自分をどのように形成できるかどうかにかかってきます。物的なモチベーションは手に入ったら消えてしまいます。欲しいものを手にしたら意欲が喪失してしまうようなら事業家ではないのです。常にコンスタントに高いモチベーションを維持しようと思ったら、心構えのモチベーションが必要となります。世の中は、これまでの、品質・機能・低価格という軸からもう一歩踏み込んだ価値軸の世の中になってきていると思います。仕事の核心は価値を作り出す事です。大事なのは、価値を感じることができる人材がいるという原点をしっかりと押さえておかないとダメだということです。それは、メーカーであっても小売であっても、サービス業であっても共通して言えることです。これからのビジネスは価値作りのビジネスをどういう風に展開していくのかということだと思います。お客さんが価値を感じるものを提供しないとビジネスは展開できなくなってきているのです。ビジネスにとって最大のリスクはマーケットリスクにあると思います。どんなに良いものを作ってもお客さんが価値を認めてくれないと意味がないんです。そういう意味で、マーケットリスクが一番の大きなリスクだという考え方に立って、事業展開していくことが重要です。


森川:そうですね。常に価値あるモノを作る前に価値ある人をつくるという取り組みにより、価値あるものを作り出し、それにさらなる付加価値を加 え続けていくことによって、より価値の高い事業モデルを築いていかな いといけないですね。